経済協力
令和6年3月19日
対ボスニア・ヘルツェゴビナ 国別開発協力方針 (令和5年9月)
1.当該国への開発協力のねらい
(1)ボスニア・ヘルツェゴビナは、2つのエンティティ[1]及びブルチュコ特別区からなる国家である。同国は、国際社会の監督の下でデイトン[2]合意に基づく国家運営が期待されているが、紛争終結から四半世紀以上経過した今なお、民族的、政治的対立が存在し、このことが政治的安定と経済発展の障害となっている。我が国は、紛争終了後から和平履行委員会の一員として、一貫してデイトン合意履行への貢献を行うとともに、社会経済の発展を支援している。
(2)ボスニア・ヘルツェゴビナの安定的な発展は、地政学的観点からも、西バルカン地域、ひいては欧州地域全体の安定にとり極めて重要である。その観点から、EUは2022年12月にEU加盟候補国の地位を付与した。ボスニア・ヘルツェゴビナは、EU加盟に向けた取り組みを進めようとしているものの、同国の民族的、政治的対立から、環境問題を含めたEU基準の達成や経済社会改革の遅れ、外国投資の低迷、それにともなう経済発展の阻害が指摘されている。特にEUや英米を中心に、政治社会面での改革・法的整備への支援や経済的支援がなされており、我が国も、国際社会の責任ある一員として、同国の持続可能な開発目標(SDGs)達成や法の支配の推進の支援を含め、同国の安定と繁栄に引き続き貢献することは意義がある。
(3)また、我が国としても、ボスニア・ヘルツェゴビナのEU加盟プロセスの進展を促すべく、高い技術と豊かな知見を活用しつつ,人間の安全保障の向上、質の高いインフラ輸出を念頭に、協力支援を継続していく外交政策上の必要性は高い。
2.我が国のODAの基本方針(大目標):社会の安定化と経済発展に向けた支援
同国における持続可能な開発目標(SDGs)の実現を目指すと共に、人間の安全保障の向上をはかり、ボスニア・ヘルツェゴビナの安定と持続的な経済成長を支援し、また、同国のEU加盟に向けた努力を支援する。
3.重点分野(中目標)
(1)政治社会面での安定的な発展
民族融和を念頭に置きつつ、保健衛生・教育サービスの改善、ガバナンスの強化、残存する地雷除去等の分野における支援を行う。
(2)持続可能な経済成長
ボスニアが有する豊かな自然、天然資源、技術、高い労働力を生かしつつ、持続可能な経済成長を達成するための支援を行う。具体的には、環境・防災、観光振興、中小企業育成、インフラ整備等の分野への支援を行う。
(3)EU加盟プロセスの進展
上記2分野への支援において、ボスニア・ヘルツェゴビナのEU加盟の促進を目指すことに加え、経済社会改革、EU基準の達成に向けてソフト面を中心に改革支援を行う。
4.留意事項
対象地域及びボシュニャク系、セルビア系及びクロアチア系の3構成民族間のバランスに特段の配慮を払うとともに、EU加盟に向けた進捗及び、同国に影響を及ぼす国際情勢にも留意する。また、西バルカン地域全体を視野に入れた案件形成にも留意する。
____________________